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◆原発の電気を買うことで関電の原発を「応援」するのはもうやめよう!

槌田 劭【人民新聞 2017年4月25日】

原発時代の終末は近い。原発ムラの金庫が心細くなってきたからである。「金だけ,今だけ,自分だけ」の原理で動く世を,私は《金主主義社会》と呼んでいる。主権は在民せず,お金の力に奪われているからである。原発ムラが原発をあきらめざるを得なくなるのは,金銭経済的に立ち往生するときであり,消費者主権が回復するときである。

●原発産業の破綻

東芝の苦境が象徴的である。その流れを世論の力によって決定づけるのが,消費者電力の自由化であろう。昨年4月以来,1年間で60万件以上の小口電力契約が関電から新電力会社に移っている。契約が5%も減少することは,関電にとってきびしいことだろうし,それでなくても,節電と景気動向を反映して,福島事故前と比べて,5年間で15%も販売電力量を減らしているのである。

関電の狼狽ぶりは,ガス自由化に伴う事業参入の過剰宣伝,大阪ガスへの脅しとも見える過剰反応からもうかがえる。原発事業が重圧となって価格競争に後退する現実はきびしいが,目先の金勘定では原発再稼働の幻想にすがるほかないのだろう。

関電も企業生き残りをかけて真剣なのであろうが,その経営体質は「親方日の丸」であり,原発依存は硬直化してしまっている。多年にわたる政府認定の総括原価方式に毒され,経営の苦労もなく儲かるシステムで,経営能力も衰弱しきってしまっている。

経費の3%を自動的に利益と認められるシステムで,原発ムラの育成裏金となる経費水ぶくれ利益を許していた。官界だけでなく,マスコミや学界への工作資金は,原発の「安金神話」をでっちあげ,福島事故を呼んだのである。

電力自由化によって電力事情には激震が起こっているが,関電は原発再稼働以外の知恵はないようだ。原発安価神話の幻想はすでに破綻しているのに,当面の金勘定から限界費用の小さい原発の再稼働に執念を燃やすのは,新電力との価格競争に対抗できないからである。

原発再稼働への準備を急ぐ中で,過労自殺や高浜原発でのクレーン倒壊などの事故が発生している。無理に無理を重ねた上での再稼働が重大事故を呼ぶのが分かったが,その危険にも目をつぶる関電の経営姿勢には,末期症状の危険が露出する。

●世論の圧力で流れは変わる

危険な現実は強まっているが,原発のコスト高が顕在化してきたからである。それも脱原発世論の圧力故である。京都でも,脱原発の市民的運動は持続的に継続している。私が参加する「使い捨て時代を考える会」の毎月11日の定例行動では,地震発生の午後2時46分から1時間,関電京都支店前(京都駅前)に10~20名が集まって,チラシ配りや署名活動を行っている。福島事故を忘れないためでもある。2011年4月からだから,6年を過ぎた。

また,毎週金曜日午後5時から7時まで,京都支店前に100人前後の人びとが集い,脱原発の声をあげつづけている。それも2012年5月からだから,5年になる。私は職員出入口で,退社する職員を観察することにしている。社員の中に脱原発の声へのいらだちの目立つのは変わりがないが,共感も生じはじめている。今年に入って,か細い声で「ごくろうさん」「お疲れさま」と出ていく職員が3月に1人,4月に2人あらわれた。社内にも原発グループの横暴に批判的な声が出はじめているとも閃聞(そくぶん)している。

関電は福島事故後,毎年2000億円を前後する赤字へと転落した。しかし,昨年と今年の決算は黒字に回復している。石油燃料代が大きく低迷したおかげである。原子力部門が足引っ張りをしているにもかかわらず,火力が頑張っているのである。冷遇される水力や火力事業部の職員の中に,原子力事業部への不満が高まっても不思議でない。

原発の電気は割高なのである。その上,危険であって,事故発生時の対応は想像を絶する出費となる。長期的視点では良い点がない。原発を固守する無能経営で,自由化価格競争は蟻地獄となっている。

「原発の電気はいらない。買いたくない」との市民世論は,関電の原発断念へ作用するだろう。

昨年夏より,ささやかな暑名活動を京都ではじめていたが,この5月から全関西に拡大したいと思っている。福島事故を忘れたかのような再稼働の策謀をやめさせるために。原発の電気を買うことで,関電の原発を「応援」するのをやめたい。

それが福島を忘れず,今も苦悩する方々に心を寄せることでもある。

槌田劭(「便い捨て時代を考える会」相談役)のプロフィールは,「使い捨て時代を考える会」のWebでご覧いただけます。
こちら

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◆電力選択,消費者の責任

槌田 劭【京都新聞2017年3月24日 随想やましろ】

福島原発事故から6年,被災の現実は今も厳しい。約10万人の被災者は住居も職も奪われ,避難生活を強いられている。南山城にも数百人の避難者がいるといわれる。行政の支援も縮小の傾向にある。正規の業務でないからなのだろうが,冷たさを感じる。

冷たいといえば,国である。事故の責任に謝罪どころか,補償についても冷淡である。事故の実態は今も不明であり,放射能汚染水対策もお手上げである。しかし,「事故炉はアンダーコントロール」と安倍首相はオリシピック誘致で世界に虚偽を語った。

賠償補償を免れるためなのか,避難区域を縮小して帰還を強制している。一般人の被ばく我慢限度年間1ミリシーベルトの法的規制を,20ミリシーベルトに緩和した。冷たく,違法な理不尽である。

いま,司法リスクといわれる問題に原発推進の業界は頭を痛めている。大津地裁の仮処分で関西電力の原発再稼働はストップ。先週の前橋地裁の損害賠償請求訴訟の判決である。巨大津波を予見しながら,安全神話に酔った東京電力と規制不作為の国を裁いたものである。

金だけ今だけ自分だけ,の世である。大電力会社と経済産業省の癒着によって,日本の電気料金は不当に高い。その上,被災賠償,廃炉や使用済み核燃料の後始末の費用なども青天井である。

昨年4月から1年。消費者電力の自由化によって,関電の経営は厳しい。高い電気料金に消費者が離れ,すでに60万軒が新電力会社に移ったが,関電には原発再稼働以外に知恵はないようだ。

東電の電気を使っていなかった福島の方々が厳しい被災に今も苦しんでいる。電力購入の選択が自由化された今,なお原発の電気を買い続けるのか。都市消費者はその責任を問われている。原発の世は冷たいものなのか。

槌田劭(「便い捨て時代を考える会」相談役)のプロフィールは,「使い捨て時代を考える会」のWebでご覧いただけます。
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◆5月1日に行った関電との話し合いの記録

関電側;広報担当者ほか2名。
使い捨て時代を考える会;4名。

今回は以下の質問書を提出し、話し合いました。
質問書
……………………………………………………………………………

  1. 去る3月28日の大阪高裁決定により、貴社は高浜原発3、4号機の再稼動を進めておられますが、これについて質問します。
    • ①免震棟(あるいは耐震棟)ができていない中で事故が起きたらどう対処するのですか。
    • ②福島原発事故では多くの東電社員と下請け労働者が被爆したと伝えられていますが、職員の安全の確保はできますか。
    • ③ベント付フィルター装置もまだできていないと聞きますが、もし重大事故が起きたらどのように対処するのですか。
    • ④再稼動するにあたっての住民の避難計画を提示してください。
    • ⑤六ヶ所再処理工場の完成は2018年と言われています。さらに伸びる可能性もあると言われています。使用済み核燃料の再処理の見通しが立たないのになぜ再稼動するのですか。
    • ⑥1月に起きたクレーン倒壊事故は全く人為的なミスでした。今後このような事故が起きないと断言できますか。
    • ⑦なぜ、再稼動を急ぐのですか。命よりもお金を重視した経営と思わざるを得ません。なぜそのような経営方針を取るのですか。
  2. 電力自由化によってこれまで他社に切り替えた消費者はどのぐらいの割合ですか。また高浜原発の再稼働に踏み切られた時には、貴社から他社へ切り替えるという消費者も多数います。今後も増加するでしょう。消費者は原発に依存しない電力会社を望んでいるからです。貴社の経営には深刻な影響があると思われますが、そのことについてどのように考えられますか。
  3. 原発事故処理費用のうち、賠償分について、「本来過去に積み立てておくべきであった費用」を、原発の電気を拒否する新電力も含めて、託送料金に上乗せして、2020年から40年間徴収する方針が出されていますが、福島原発事故の教訓があるというのに、さらに原発の再稼動を行って、それらが事故を起こした場合の賠償費用を新電力からもとろうというのは納得できません。貴社のお考えをお聞かせください。

以上
……………………………………………………………………………
話し合いの内容(Q;こちら側の発言  A;関電の発言)
Q 質問書にひととおり答えてください。
A(1-①)耐震棟というか緊急時対策室が、1.2号機の間にある。1.2号機が動くなら使えなくなるので別の所に作る。
(1-②)当然だが線量管理をし、訓練している。
(1-③)フィルター付ベントは猶予期間があるが、それまで他の対策をしている。福島で起きた水素爆発が起きないように水素を軽減する装置がある。炉内が高温にならないような対策もしている。
(1-④)避難計画は自治体がやっていて、当社としてはやっていないが、丸投げはしていない。協力できる部分は協力する。たとえばスクリーニングとか。
(1-⑤)六ケ所の再処理がいつ始まるかは言える段階ではない。中間貯蔵計画も進めていく。
(1-⑥)クレーン倒壊はお詫びをする。ちゃんと手を打たないといけないので、調査して手を打った。3月末に動かしていいことになったが、(対策していたので)5月再稼動になった。
(1-⑦)(再稼動を)急いでいるわけではない。慎重に工程を進めている。
A(質問2について)電力自由化で切り替えた割合は一般(小規模)で72万件だ。当社のグループ会社に切り替えた例もあるが、割合としては5%。切り替えた理由は価格、電源構成など。しっかりと考えていきたい。

Q 今後も関電離れは続くと思う。子どものときからお世話になっているので、義理はないけど、こういう事態は気になる。
A 電源構成でも(切り替えに)動くということは承知している。

Q それでも再稼動するのか。新電力に変えた人で、原発が嫌いな人は客としていらないということか。
A 5%は重大な割合なので必死で考えている。原発がいらないという人を切り捨ててよいとは思っていない。

Q 避難計画が作られても、仮に避難ができたとしても、大事故が起きれば何年も避難しなくてはならなくなることは明らかだ。それにもかかわらず再稼動するのか。再稼動は危険だ。何故いそぐのか。
A 当社としても安易に再稼働を進めれば会社として成り立たない。安全性を確認しながら一歩ずつ進んでいる。

Q 東電は批判にさらされている。東電は破産状態だが国に守られている。国に守られているから、いくら安全第一と言っても口先で言っているとしか思えない。
A(質問3について)福島の賠償金を託送料金に乗せるということは議論されている。意見書が出された段階だ。福島の分だけで、これから再稼動する分については対象外だ。

Q そのことはどこで確認できるか。
A 委員会報告で出されている。機構法(原子力損害賠償・廃炉等支援機構法)が福島の事故が起きる前にはちゃんとできていなかった。福島事故は機構法ができる前の事故だ。

Q モラルハザードではないか。決済済みの取引を遡るのは理不尽だ。それでは決済がいつまでも終わらない。モラルがなさすぎる。
A 過去分について、その分も見積もって考えていく。被害者の賠償を先に考えていく。

Q 東電では始末ができない。事故を起こした当事者責任をだれもとっていない。国の問題でもある。事故を起こしたら現場検証するが、炉心に近寄れないから今でもできていない。そのことは警告されていたのに安全と押し通してきた。当たり前のように進んできたことに我慢がならない。
A さまざまな意見があるが福島事故の被害者がきちんと賠償されればいいということしか言えない。

Q 福島事故では賠償を軽く見積もっていた。これからもどんどん増えるだろう。浪江町では高汚染地帯で山火事が起きた。今も想定外の事が起きている。(これからも起きることを)関電は今の時点で想定して進めているとは思えない。賠償額を現時点では見積もれないし、積み立てられないだろう。そうすれば関電は事故費用を負担できないのではないか。それなのになぜ再稼動するのか。
A 東電の概算は甘かったかもしれない。福島と同じことが起きることがないように、起こさない基準を敷いている。事故に至らない対策をしている。

Q 福島原発も多重防護で絶対に大丈夫だと言っていたのにあんな事故が起きた。関電は大丈夫と言う根拠はない。関電の経営はとても厳しい。しかしその出口を原発に求めることに経営の無能さを感じる。
A 原子力以外の取り組みもしている。

Q 現在発電していないのに3000億円も出費している。
A 原発を動かしたらどうなるか、動かすのにどれだけかかるかを考えて再稼動を決めている。

Q 原発を動かしたらどれだけ収益が上がるのか。収益で維持費を回収しようとしているのか。原発を再稼動しても100億円レベルの収益が出るだけだろう。40年超えの原発も含めて何基も再稼動して何とかしようとしているが、追いつかないだろう。
A 維持費の回収が再稼動の理由ではない。

Q 詳しい数字を知りたい。
A 経営上の戦略で出せない数字もある。

Q 関電は他社に比べて圧倒的な力を持っている。企業宣伝がいらないのに原発の宣伝までしてきた。その反省も無しに再稼動するのか。
A いまは総括原価方式の世界ではないので、状況が厳しくなっている。

Q 4号機をなぜ先に再稼動するのか。
A 作業工程の関係だ。3号機は一度再稼動したので、点検をしなくてはならないという法的制約があるが、4号機は動かしていないのでそれがいらない。

もう時間ですと立ち上がったが、ここで以下の「申し入れ書」を読み上げて提出した。

申し入れ書

高浜原発3、4号機を再稼動させないでください。
貴社は3月28日の大阪高裁の決定によって、高浜原発3・4号機の再稼動を進めておられます。大津地裁では、関電が2基の安全性の証明を尽くしておらず、地震・津波対策や避難計画にも疑問が残るなどと指摘し、滋賀県の住民が訴えた人格権の侵害の恐れを認めて稼働を停止するという判断でした。大阪高裁の判断はまったく大津地裁の判断を覆すものでした。このように正反対の司法判断が出た中での再稼動は無謀としか思えません。なぜ大津地裁のような判断が出されたのか、真摯に考えてみるべきです。
安全対策も道半ばで、住民の避難計画もなく、使用済み核燃料の処理についても全く見通しが立たないという中での再稼動はありえません。
貴社との話し合いでは、安全を最優先させているといつも表明されていますが、あまりにもミスが多すぎるのではないでしょうか。今年1月20日にはクレーンが倒壊し核燃料が保管されている建屋を壊すという考えられない事故を起こしました。フィルター付きベントもまだ取り付けられておらず、緊急時のための施設も完成していないということですが、再稼動は、安全より経営を優先させていると見受けられます。
今、私たちの最大の心配は、取り返しのつかない大事故が起きることです。
高浜原発3、4号機の再稼動を断念するよう強く申し入れます。